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フォトグラファー 宮崎いず美さん

空想を自撮り 私と私の間に遊ぶ

コンプレックスを逆手に

「コンプレックスが、作品に役に立っています」と言う宮崎いず美(京都市東山区大和大路通四条上ル・ASPHODEL)=撮影・佐伯友章
「コンプレックスが、作品に役に立っています」と言う宮崎いず美(京都市東山区大和大路通四条上ル・ASPHODEL)

 巨大な三角おにぎりの頂で女の子が高らかに片足を上げている。ピンクのスカート、青いシャツ、前髪はまっすぐ。でも無表情。なぜ、足を上げているのか。なぜ、おにぎりの上なのか。なぜ、おかっぱなのか。

 「特に意味はありません。メッセージもないんです」

 作者であり、被写体でもある宮崎いず美は笑う。足を上げる女子の向こうで、緑の山と山型のおにぎりが重なる。空は青く、白い雲が浮かぶ。シュール、ポップ、シリアス、そんな意味さえ軽やかに超えていく。ありふれた世界に紛れ込んだファンタジーだ。

 開催中の京都国際写真祭「KYOTOGRAPHIE(キョウトグラフィー)」で、祇園にあるビル「ASPHODEL(アスフォデル)」1棟3階分のフロアにインスタレーション作品を展示している(5月13日まで 火休 有料)。「おにぎり」が鎮座する入り口、小さな穴をくぐると宮崎ワールドに吸い込まれる。2階は壁や窓が入り組み、宮崎の空想の迷路のようだ。3階は、鑑賞者も作品の一部と化していくスリルにあふれる。

宮崎の世界に入り込む展示、鑑賞者もその世界の一部となる
宮崎の世界に入り込む展示、鑑賞者もその世界の一部となる

 宮崎のモチーフは、ごはん、野菜、果物、鏡、フランスパン、包丁など身近なもの。食パンに顔を挟まれる宮崎、マヨネーズの鼻水をたらす宮崎、頭に乗せた魚ごと顔を半分に割られた宮崎。音も温度もない、時が止まったような無機質な空間で、ルネ・マグリット風の青空にブロッコリーが浮遊し、フライドポテトの雨が降る。

 画像編集ソフトでコラージュし、切り貼り。そのたびにイメージの宮崎は増殖し、切断されるが、作品にはどこか手作り的な親密さがある。ポーズは愛読するファッション誌から。大好きな服、食べ物、時々怪奇的な海外ドラマにも触発される。「かわいい」と「こわい」が混ざり合っていく

宮崎いず美「riceball mountain」 2016年  ©2016 IzumiMiyazaki
宮崎いず美「riceball mountain」 2016年  ©2016 IzumiMiyazaki

 仰向けの宮崎の髪がカッターで切られる作品がある。「すごくくだらないんです。世界中で誰もやったことがないことって何だろう。そうか、カッターで髪を切る人はいないんじゃないか、と。子どものころから、そんなことばかり考えてます」

 「楽できそうな部活はないか」と、高校の時に写真部に入ったら、「意外と面白くなった」。大学1年の時、インターネット上で自撮りの写真を発表し始めた。そのネットサービスの利用者が多い海外で、人気は広がった。セルフポートレートにしたのは、モデルを頼む人がいなかったからだ。全体的に動機は消極的、ネガティブな理由が多い。制作はほぼ一人で完結する。「根底にあるのは、コンプレックスです。外見も頭も。負の感情、暗いダークな感情で作っています」と語る。私の中の私。ドロドロした感情は、もう一人の私が浄化し、出力する。「コンプレックスが役に立ってよかった」と、そこは前向きだ。

みやざき・いずみ

 1994年、山梨県生まれ。武蔵野美術大映像学科卒。在学中からネット上のTumblr(タンブラー)で発表し、CNNやTIME誌、リベラシオン誌など欧米のメディアを中心に取り上げられ、注目を集めている。ルクセンブルクで初個展。初の写真集「私と私」(青幻舎)が発売中。山梨県在住。

【2018年04月28日掲載】