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ハンカチは振らない

【質問】大切な友達と、卒業で離ればなれになってしまいます。

 私は、同じスポーツに打ち込み、ともにひとつの夢に向かって中学生活を楽しんだ大切な2人の友人がいます。友達の中でも一番思い出が多く、付き合いも深いです。
 しかし、残念ながら進路は全員ちがい、卒業後は3人とも異なる環境で頑張ることになりました。そう簡単には会えなくなる、という現実に不安が募るばかりです。2人の前では強がってしまうのですが…。
 3人で過ごせる時間もあと少しなのに、最近ではすれ違いが多く、以前のように3人で楽しくしゃべったりすることができていません。残りの時間を3人で楽しく過ごすにはどうすればいいのか、悩んでいます。
                                         
               中学3年 15歳女子

ハラダの答え

 卒業式のシーズンだ。日本中で同じような気持ちで別れの時を不安に感じたり、寂しく思っている人がいるだろう。卒業までの「残された時間」の過ごし方。そんなものに正解なんてありはしない。それでも、きみの気持ちに少しだけアドバイスはできるかもしれないなと思った。

 時間というのは不思議だ。いつだってたくさんあるような気もするし、全然足りない気もする。無意識のうちにいつまでも一緒にいられる気分だったのに、「卒業」というはっきりとした節目によって、ある日、「残された時間」がそんなには長くないことに気づかされる。これまでと同じ24時間が過ぎていくのに、今まで感じていなかった焦りや寂しさが襲って来る。

 人生には、度々そういうことが起こる。それは、恐らく人生の幕が閉じるまで繰り返されるのだろう。そして、その時に僕たちが立ち返るのはいつも、「今を大切にする」というシンプルな答えだと思う。

 いつか訪れる終わりを無意識のうちに忘れられるのは、僕らに与えられた力だ。終わりを意識せず、楽観的に描ける未来によって、僕らは出会い、約束を交わし、互いのことを知り、友情を育む。

 きみたちはきっと、素敵な中学時代を過ごした。スポーツを通して、同じ一つの夢がいつまでも続く気分で友情を深めてきたのだろう。それぞれの個性を嫌という程知っているという自負もあるかもしれない。相手の心の「どんつき」まで行って、それでも大好きでいられた友だちなのだ。だから大丈夫。心配することは何もない。

 「でも、人間は変わって行くでしょう?」と賢い誰かが言うかもしれない。そうなのだ、きみも、友達もどんどん変わって行く。新しい環境のなかで、成長するとともに考え方も変わっていく。新しい夢を見つけたり、想像もしていなかった恋をするかもしれない。中学生の時には絶対に口にしなかった言葉を言うようになったり、髪型やファッションも今とは全く違うものを選ぶようになるかもしれない。

 でもそれは、あの「どんつき」で確認した大好きな友達が、それぞれの個性の先で選択して、成長して行く姿なのだ。一緒に過ごせなくなっても、話す時間が少なくなっても、中学生だった時に確かめた思いを頼りに友達で居続ければいい。友情を疑う必要はない。ただ、お互いの変化を伝える勇気と受け入れる勇気を、それぞれが持つだけでいい。

 もしも、「私は今のあなたが好きになれない」と思ったら、正直に伝えるのも勇気だ。自分の「どんつき」で繋がっている友からの言葉は、時に引き返す力や、間違いに気付かせてくれる力になるかもしれない。

 もう気付いているかもしれないけれど、きみたちの時間は残り少ないのではなく、今から始まろうとしているのだ。だから今は、離ればなれになる未来でも本当にお互いを大切にして行くと、ちょっと恥ずかしいけれど、約束したり、確かめ合ったりするだけでいい。卒業式までの残された日々を、いつも通りに馬鹿話をして笑い合えばいいのだ。一番特別なことは往々にして、変わらないと思っていたありふれた毎日だったりする。そういう意味では「強がっている」時間は、もうあまりないかもしれないな。

 きみたち3人が、何年も先に、「卒業でお別れと思ったけど、腐れ縁だね」と笑い合ったりするなら素敵だなと思う。変わっていく毎日の中で、変わらない何かを捕まえられていますように。

「ハンカチは振らない」 作詞作曲:原田博行

歌詞

photo by かつらかづみ

君が遠くへ行く 空港まで見送る
こんな時はハンカチを振るのかな
盛り上がってみたけど
誰もハンカチがない
君が住むという街 グーグルアースで
クリックするだけで街並みまで
わかってしまうんだな
時間や距離を超えて
握手してハグして手を振った
知らなかったそんな街も
君がいるから近くなるよ
何も怖がることはない
だからハンカチは振らない




◇       ◇       ◇

 サウンドロゴ・クリエイター、シンガーソングライターにして現役高校教師の原田博行が、みんなの悩みにオリジナルソングで答えます。ギター1本の語り弾き、「アイ・ラブ・ミー」なハラダ先生による明るい相談室へようこそ!

【2018年MM月DD日掲載】