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[11]災害から命を守る 防災情報システム

立命館大情報理工学部教授  仲谷善雄氏
京都市防災危機管理室で行われた水害対応訓練(昨年6月、同市提供
京都市防災危機管理室で行われた水害対応訓練(昨年6月、同市提供

 日頃は目にしないけれど重要なシステムのひとつに防災情報システムがあります。災害が予測されたり、起きたりすると、国、都道府県、市町村は、それぞれの立場でさまざまな対策を実施することになります。今どのような状況にあり、今後どのように進展するか、どのような対策をいつ取ればよいかなどを判断するためには、さまざまな情報が必要になります。このような情報には、災害時にしか入手できないものもあれば、災害前に蓄積しておくことのできる情報もあります。例えば、過去の大雨で川のどこから氾濫したかなどの地域特性の情報は、前もって入手できます。このようなさまざまな情報を一元的に管理するのが防災情報システムです。

 ひとくちに防災情報システムと言っても、国、都道府県、市町村で異なります。この違いはどこから来るのでしょうか。そのひとつは避難命令を出すということです。実は避難命令という用語も制度も日本にはなく、正式には避難準備情報、避難勧告、避難指示の3種類があります。避難準備情報は、被害の可能性があるときに避難の準備を始めたり、避難に時間のかかる高齢者などは避難を始めてくださいという情報です。避難勧告は、もう避難を始めてくださいという情報です。避難指示は、大至急避難してくださいという、もっとも緊迫した状況を伝える情報です。これらの情報を住民に出せるのは、実は市町村長だけなのです。災害対策基本法で決められています。市町村長はいつこれらの情報を出せばよいかを判断する必要がありますし、それを確実に住民に伝えなければなりません。このためのシステムが市町村の防災情報システムなのです。住民の命に直結する情報ですから、さまざまな情報源から最新の正確な情報を入手し、過去の事例などを参考にして、3種類の避難情報のうちのどれを、どのタイミングで、どの地域に、どの手段で伝達するかを決め、それを実現する必要があります。情報入手のためには、川の水位計、雨量計、風速計などのセンサー情報、信頼性の高い情報源からの情報などを利用します。もちろん住民からの通報を、電話、ファクス、電子メールなどの手段で受け取ることもできます。伝達手段としては、防災無線(屋外拡声装置)、FMラジオ、ケーブルTV、サイレン、広報車などが使われます。ただ音を使った手段だと、豪雨のときやビルの陰などでは聞こえにくく、また聴覚に障がいのある方には役に立ちません。そこで最近ではフェイスブックなどのSNS(社会的ネットワークサービス)やエリアメールなども使われています。

 もうひとつ、市町村のシステムと都道府県のシステムで違う点は、罹災(りさい)証明です。罹災証明は家屋などが被害に遭った場合に、その程度や損害を市町村が証明するもので、復旧復興の基本となる重要な情報です。これを発行するための基礎となる情報が市町村の防災情報システムには蓄積されます。

 一方で都道府県の防災情報システムの特徴は、広域にわたる被害の把握や市町村の間の調整などですから、より広域の情報を効率よく収集する必要があります。例えば都道府県所有のヘリコプターからの被害映像を無線で入手し、それを地図と比較して、どの箇所でどの程度の被害が発生しているのかを自動的に判断するような機能を備えているものもあります。また大規模な災害対策本部室の中に設置されるのも特徴です。東京都や大阪府などのシステムは、大型画面を使って、百人もの関係者が情報を共有し、対策を検討し実施しています。

なかたに・よしお

 1958年生まれ。81年大阪大人間科学部人間科学科卒業(社会心理学)。防災などの社会システムに人工知能やヒューマンインタフェース技術を適用する研究に従事。三菱電機中央研究所などを経て2004年から立命館大情報理工学部教授。14年から同学部長。

【2018年02月14日掲載】