週刊誌で報じられたセクハラ疑惑に批判が集中したことを受け、財務省の福田淳一事務次官が辞任の意向を表明した。事実上の更迭である。 財務次官が引責辞任するのは1998年の旧大蔵省時代の接待汚職以来、20年ぶりという。財務省では、文書改ざん問題で佐川宣寿前国税庁長官が3月に辞任したばかりだ。 事務方トップ級の2人が相次ぎ辞任する異例の事態に、国民はあきれかえっている。「最強官庁」が、なぜこんなありさまになったのか。麻生太郎財務相の任命責任はもちろん、安倍政権の行政管理能力も厳しく問われる。 福田氏はセクハラを否定し続けており、辞任は「報道後の状況を見ると、次官の職責を果たすことが困難と判断したため」という。だが「録音された声が自分のものか分からない」との説明には首をかしげざるをえない。 民間でも自治体でもセクハラには厳しく対応しているところが多い。財務省は引き続き、事実解明に徹底して取り組む必要がある。その上で、懲戒処分を含め組織としてのけじめをつけるべきだ。 この問題で、テレビ朝日は同社の女性社員が被害を受けたと明らかにした。相談を受けた上司が報道を見送った経緯があり、報道局長が「適切な対応ができなかった」と反省の意を示した。 加害者と被害者、双方の属する組織でセクハラに対する意識の低さが浮き彫りになった。 セクハラ疑惑は週刊新潮が先週報じた。麻生氏は当初、口頭で注意しただけで追加の調査や処分は行わないとした。音声データが公表されると、被害を受けた女性記者に名乗り出るよう求めた。 疑惑そのものに加えて、報道後のこうした対応が世間の常識、国民の人権感覚とかけ離れていると厳しい批判を呼んだ。麻生氏の責任は重大である。 支持率が落ち込む安倍政権にとって、追い打ちとなるのは間違いない。 それなのに麻生氏は、野党の責任追及にこたえず、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため米国に向かった。慣例となっている国会の了承がないまま閣僚が海外渡航するのは異例だ。 不祥事の連鎖に国民の不信感は募る一方だが、政権内に問題に誠実に取り組もうという姿勢が見えない。「うみを出し切る」と繰り返す安倍首相は、うみの原因がどこにあるのか向き合うべきだ。
[京都新聞 2018年04月20日掲載] |