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出産・育児と議員の両立 求められる意識改革

洛西総局 大西成美
出産予定日を翌月に控え、着席したまま本会議で意見陳述する辻町議(右)。大山崎町議会では初めて許可された=12月19日、町議会議場
出産予定日を翌月に控え、着席したまま本会議で意見陳述する辻町議(右)。大山崎町議会では初めて許可された=12月19日、町議会議場

 昨年11月、乳児を連れた熊本市議が議場入りし、論議を呼んだ。京都府大山崎町議会は12月、母体保護の配慮から出産直前の町議が着席したまま再質問や採決時の討論を行うことを初めて認めた。議場の混乱を招くのは問題だが、議員は労働基準法などの適用外で、出産の前例もわずか。活動に悩む切実な声を聞いた。母親と議員活動の両立を「当然の権利」とするために社会の意識改革が求められる。

 「任期中の妊娠に、非難を恐れる気持ちも正直あった」と辻真理子町議(40)は話す。住民の代表が議会を欠席していいのか、葛藤もあった。妊娠公表後、周囲から気遣う声が上がった。出産予定日まで1カ月を切った時、議会で着席での陳述が認められた。3月議会では授乳室も用意された。「議員も出産は当たり前の権利なんだ」。肩の荷が下りた気がしたという。

 乙訓地域で任期中の出産を経験した議員を取材した。元町議(67)は「町議選で他候補から子を産んだことへの批判を受けた」と明かす。長岡京市議(47)は「精神的に不安定な時期、休む期間を自己判断で決めるのが苦しかった。無報酬でも議会を休んでいい期間があれば安心できた」と振り返る。

 ただ、地方議員の出産・育児への配慮や対応を巡る議論は低調だ。府内自治体の各議会事務局に聞くと「改修工事で傍聴者用ロビーに授乳スペースを設ける予定」(京都市)、「妊娠中の議員に着席での採決を過去に認めた」(長岡京市)などの回答があった。一方、そもそも対象者がいないため、ほとんどは「前例がなく、検討もしていない」状況だった。

 こうした中、東京都の区議らを中心に地方議員の任期中の妊娠や出産を支援するネットワークができ、相談窓口が開設された。上智大の三浦まり教授(政治学)は「関心の高まりやSNSの発達で議員同士がつながりやすく、声を上げやすくなった。多方面で検討が進めばより多様な声を吸い上げられる」と話す。

 内閣府の調査では、全国の地方議員の女性比率は約1割(2016年末)で、多くが出産など休業制度が不十分と感じているという。海外では男女差解消を試みる国もあり、フランスでは男女ペアで選挙に立候補する制度がある。国内でも選挙の候補者数を男女均等にするよう政党に促す法案が今月12日、衆院本会議で可決された。

 女性活躍が進み、妊娠中でも働き続ける例が増えている。妊娠期の働き方については民間でも模索が続く。少子高齢化時代、育児や女性の社会参画の課題解決には同性議員の活動が鍵を握る。住民に身近な地方議会で女性が働きやすい環境を整えれば、議員のなり手も増えるのではないか。その第一歩として社会全体が意識を変えていく必要がある。

[京都新聞 2018年4月25日掲載]

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