The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

嵐山のまちづくり 景観生かす地域像模索

報道部 加藤華江
嵐山まちづくり協議会の対象区域に含まれる通り(京都市右京区)
嵐山まちづくり協議会の対象区域に含まれる通り(京都市右京区)

  京都市右京区の商店主や住民らで主体的に景観について考える「嵐山まちづくり協議会」(牧野順二会長)がこのほど設立された。自分たちで町並みを守ることができると歓迎する一方、規制強化につながると懸念する声もある。歴史や伝統に裏付けされた景観に価値を置く地域のまちづくりはどうあるべきか、地元で模索が続く。

 「刃のない刀で戦場に行くようなもの」。事務局長を務める鳥澤ブルース・リーさん(61)は、協議会の活動をこう例えた。嵐山まちづくり協議会は、京都市の制度「地域景観づくり協議会」の認定を目指してつくられた。この制度は、対象の地区で建築をする事業者らが、景観に関する条例の許認可などの手続きをする前に、地域と建築の計画内容を協議することを義務付ける。地域は景観への思いや特性を直接伝えることができ、事業者は配慮する点を事前に知ることができる。

 ではなぜ「刃のない刀」なのか。意見交換を義務付けることにとどまり、ルールを定めたり、強制したりするものではないためだ。地域からの意見や要望を事業者は計画に必ず反映させる必要はない。

 それでも協議会をつくったのは、「言われるがままではいけない」という思いがあるからだ。問題意識を抱いたのは8年前。今回の対象エリアでもある場所に、ある企業の3階建ての施設が建設されることを知った。風致に関する市の条例などは全てクリアした設計。しかし、平屋か2階建ての町並みの中で、3階建ては圧迫感がある。「嵐山の借景」を分断してしまわないかと危惧した。

 鳥澤さんたちは企業に要望書を提出し、自ら完成予想のCGを制作するなどして交渉を続けた。そして当初の計画より数メートル低く、圧迫感を軽減した設計となった。この例では地元の意見をくみ取る結果となったが、当初計画が決まってからしか意見を言えない状況にあきらめも感じたという。

 協議会設立の意向を調査するため昨秋、対象エリア164軒にアンケートを行った。「嵐山の風景を魅力的にしているものは何だと考えられるか」の問いには、「渡月橋」が83・4%で最も多く、「竹林」66・2%、「嵐山」57・2%と続いた。「魅力ある風景を守り育てるために必要な対策は」に対しては、「嵐山や竹林など自然資源を保全する」が82・8%で、「新しく建つ建物を自然や歴史的風景になじむものにする」が64・8%、「大堰川の風景を保全する」が53・8%となった。

 多くが自然を大切に思い、守る必要性を感じていると分かる。一方で自由記述では「住民の生活にあまりにも厳しい規制がかかり過ぎないようにして下さい」「必要以上に新しく建つ建物の規制を取り締まって、競争力を失って、活気のないまちづくりの方向には進めてほしくない」と、心配する意見もある。

 「次の人たちのために、自分たちがいいと思った景色を残したい」と強調するも、「新しい建築は、次の時代を切り開くチャンスかもしれない」と鳥澤さんも難しさを話す。100年後、200年後にどう実を結ぶのか、取材を通じて移り変わる現場に立つなかで自分も答えを探し続けるしかないと思った。

[京都新聞 2018年5月9日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP